DID
暗闇の世界。視覚のない世界。そんな世界に僕らはいる。世界の名前はダイアログ・イン・ザ・ダーク。暗闇の世界だ。 ツアーの終わりに、僕らは居間に通された。巨大なテーブルが置かれ、たたみの床に座り込む。光のない世界で、ツアーコンダクタさんが各種の…
人間は情報収集の80%を視覚が占めている、とよく言われる。その視覚情報をさえぎることで他の感覚が鋭くなる、という話も聞く。では視覚のないDIDの中では、どうだっただろうか? 正直に書くと「普段と同じ」だった。何か期待している人もいると思うが、少な…
僕は物体を立体的に見ることができない。飛んでくるボールの距離を測ることができず、キャッチボールはうまくできないし、バッティングはすべてタイミングだけを計ってバットに当てるしかなかった。多くの人が球をよく見ろ、と僕に言う。しかし理解できたの…
唐突に手を握られたり、抱きつかれたり、杖でつつかれたら、君はどう感じる? DIDは真っ暗闇の中に、老若男女、かまわず数人がグループになって入れられる。ちょっと不思議に思うのだが、あの中にいると、なぜかグループには連帯感が生まれる。たぶん釣り橋…
デパートに買い物に行く。着いたフロアに何があるかはわかる。ここは楽器のフロアだ。だけどフロアマップは見当たらない。どうやら存在しないらしい。さて、どうやって商品を探す? 君はどうやって探す? 「フツーに探す」って思ったなら、ちょっと考えて欲…
モノを認識するとはなんだろう? あるところに盲目の天才がいた。彼は子供の頃から目が見えなかった。彼に会う人はたいてい、こんなことを聞いてくる。「モノが見えないってどういう世界?」 彼は質問者に聞き返した。「君は、モノが見える世界がどういう世…