オタク化の抽象性

女性数人がお菓子作りについて話をしていた。僕もそちらにまざって話をしている。バターは室温に戻して混ぜるが、液体になったバターをあわ立てるわけではない、とか、角が立つまであわ立てるメレンゲは塩を少し入れることで、泡が安定する、とか。お菓子作りの基本の話である。
すると、その話を聞いていた、料理を一切しない男が言う。
「あの、すげー異次元の話をされてるぐらい、わからない」
その場にいた女性からは「えー? ジョーシキでしょ?」という声があがった。
僕は、おもしろいな、と思った。
つまり「オタク」とは、そういう「誤差」なのだ。オタクと、それ以外の誤差だ。多くの漫画に無知な人間は、ワンピースの話をするだけで、オタクと言う。ワンピースは聞いたことがあるが、どういう内容だか知らない。同様に、お菓子作りに無知な人間から見れば、クッキーを焼くだけで十分にオタクである。クッキーは食べたことがあるが、何でできているのか、どうやって作るのかは知らない。
知識はかならず偏る。その偏りこそがオタク化である。