誰が美を定義したのか?

オッドアイの猫がいた。それを見た男が話しかける。「君の瞳はきれいだね」猫はにゃあとだけ鳴いた。
犬の話をしよう。犬は人類の進歩とともに存在している最も古いペットだ。ある犬種は、美犬コンテストで入賞するために、品種改良で耳が長く作り出された。それから100年が経ち、犬の耳は地面にこすれるほどになった。コンテストの入賞には耳が地面にこすれる犬ばかりが並んだ。しかし地面にこすれてそこから感染症を患うケースが増えてきた。
ある犬種は闘犬だった。そのため皮や脂肪が厚い品種改良が成された。闘犬はその品種ばかりになり、周囲の闘犬も同じようになっていった。皮膚が厚く、自分の体重が増えてしまい、やがて成人病と言われる病気にかかりやすい犬になった。脂肪が厚すぎて、自力での交配や出産に支障を来した。
最初は障害のようなものだったはずだ。だが人間が「それはきれいだね」と言った。だからそればかりを人工的に増やした。自然ではない、不自然さだ。だが美しいとは、そういうことだ。人間が作り出した。それによって生まれた生物は生きるのが辛くても仕方が無い。残酷な話だ。そしてその残酷さを好んでいる。
オッドアイの猫は「その美は君が感じているだけのことであって、君の中にある美しさだ。私には関係が無い」と答えた。人はにゃあとだけ聞こえた。