デブと金と豊かさについて

昔。日本だと50、60年ほど前だろうか。太っていたほうが良い、という時代だった。食べ物が不足していた。キャラメルは高カロリーだったから「1粒300メートル!」などという売り文句だった。食べる者が少ない時代、太れることは豊かさの象徴だった。
現代はデブと非難されている。肥満が非難されている。飽食の時代だからだ。食べることに困らない時代になったからだ。
さて、現代において「食べ物」に取って代わるものは何だろう、と考える。いくつかの候補がある。
そのうちの一つは「物」だと考えてみよう。
昔は、物がなかった。だから手に入れたら自慢できた。物が多い方が優れていると言われていた。だから多くの人がコレクションをした。身の回りに物を集め、物が多いほうが裕福だと言われてきた。だが現代において、それは肥満と言われる状態なのではないだろうか。珍しいものがあふれ、そして珍しいものしか存在しなくなったとき、人は「レア」というものに価値を見いだすだろうか?
物だけではない。そのうちの一つは「情報」だと考えてみよう。そのうちの一つは「金」だと考えてみよう。そのうちの一つは「人間関係」だと考えてみよう。どういう展開が可能だろうか? さて、僕を豊かにするものはなんだろう? 僕は「肥満」になっていないか? あなたはどうだろう?