行方不明者は消えたわけじゃあない

震災でなくなった方の遺体が、体育館にずらりと並べられている。そんな写真を見た。
行方不明者がいる家族は、その体育館をぐるぐるとまわり、何千という遺体を見て、自分の家族かを確認していた。腐乱し損傷した遺体もあった。名前がわかるものを身につけた遺体は身元がわかったが、顔のない遺体は確認が難航した。
遺体はビニール袋の上に寝かされていた。遺体の頭のほうに、性別と身長と予想年齢が書かれている。妊娠7〜8ヶ月の女性と書かれたプレートもある。遺族が見つかれば、ようやく棺に入れられるが、それ以外はビニールの上で、確認待ちだ。
見つけられない者はどうするのだろう。家族がまるごと飲み込まれた者はどうするのだろう。
肉体はソフトウェアを載せるためのハードウェアに過ぎない、という言い訳をいつも考えている。そういう言い訳で自分を守っている。そして遺体を見るたびに、そんなのは弱弱しいただの言い訳だと露見する。