思い通りに行かないのが世の中なんて割り切りたくないから

「また、リア充爆発しろってツバをかけられた」男は被っていた帽子を床にたたきつけて言った。「もう嫌だ」
隣に座っていた彼は静かな視線で男を見ていた。
男は彼の視線を気にすることなく、椅子を蹴った。
「クリスマスがただの一度でも俺に! 俺たちに! 優しくしてくれたことがあったか? 群集を見てみろ。奉仕する我々を裏切り、石を投げ、モノをよこせとわめきだてるだけではないか!」
一通り愚痴った男は、彼のほうへ恨むような視線を向けた。
黙っていた彼がようやく口を開いた。
「…そうかもしれない。だが僕は、彼らを見捨てることはできない。そんな彼らにも子供ができて…やがて僕らを必要とするかもしれない」
彼は男の帽子を拾い上げ、差し出した。
真っ赤な帽子に、白いぼんぼり飾りがついていた。
「それが……サンタクロースだ」
トナカイは落ち着いた口調で男に言った。