絵について

絵をほとんど描かなくなった。理由はわかっている。絶望しなくなったからだ。
絵を描いているときに思っていたことがある。絵を描くという行為は、絶望を結晶化することだ。そうやって体外に出している。
だから僕が絶望すればするほど、絵は緻密になり、上手になり、孤独になり、すばらしくなっていく。絶望を固めてできたダイヤモンドみたいなイメージだ。だから幸福になれば絵は描かなくなるだろう、と想像していた。
その通りになったようだ。当時より、だいぶ幸福になったのだろう。
絶望が何かを生み出すことはある。かならずしもマイナスではないもの。僕はもう、そうはならないだろうけれど。絵について、そういう印象を持っている。少なくとも僕の絵はそうだった。