名づける

友人の家で飲み会があった。その中で出てきたある料理の話だ。その料理は、友人が作ってくれたものなんだけど、それがうまかった。数ヵ月後、友人に「あの料理作ってよ」と言ったら、覚えてない、と言う。適当に作ったらしい。素材はこんなんで、味はこんなんで、と言ったが、結局、同じ料理が出てくることはなかった。
レシピに起こす、という手法はあるだろう。しかし、料理ができる才能のあるものは、そんなものに頼らず、その場で、ぱっと思いつきで作り、そのまま消えてしまう。どんな料理だったのか、誰も再現することはできない。
たとえば、マッサージしているとする。とても気持ちよい箇所があったとして、誰がそれを保存できるだろう? そこがキモチイイ! という箇所があったとして、その場で告げて、名前をつけるのが、再現の可能性が一番高いはずだ。ツボには名前がついていて、それぞれの効能が、料理のレシピのように保存されている。
保存する、とは、名づける、ということだ。
名づけておけば、それが保存される。
名前を残したがる人がいて、そのためか、名前だけが残る場合も多い。名前(ラベル)そのものが重要なのではなく、中に何が入っているのかわかること、中に入れること、そしてそれが取り出せることが、重要なのだが。