ある想像上の僕

いつだったか。もう何年も前の話だ。会社の飲み会で、こんな話をOLさんからされた。
「もし大震災があって、ウチのビルが倒壊して、あたしが身体を挟まれて脱出できないってときを考えるのね。
で、もしその場に営業部Aさんが現れたら、『ちょっと待ってて!助けを呼んでくるから!』って言い残して、どっか行っちゃうの。あたしは『ここにいて!』って言うんだけど、結局いっちゃうカンジ。
で、製作部Bさんは、あたしを助けようといろいろやるけど、その建物は倒壊して、あたしと一緒につぶれて死んじゃう。経理のCさんは、おろおろおどおどしてる間に、結局つぶれちゃう。
でも、あんたは、一人だと現れないカンジ。なんか誰かと一緒に現れて、特に何もしない感じがする」
そのときは、良く見てるなぁ、と思った。
たぶん苦笑しただけで、特に何も言わなかったはずだ。
今なら面白い答えを返せる。なぜ僕が現れないのか。答えは簡単で、僕が現れると、あなたは間違いなく、助かっちゃうからですよ。ほらね、助かる想像しかできないでしょ?