服に宿る

僕の住んでいる位置は、冷たい空気と低い湿度に包まれていて、空がとても高い。こういうときは、日本海側が雪だそうだ。空が高いって、何か見えているのだろうか。少なくとも雲はない。それなのに、空が高く感じる。強い風が吹いている。
僕はゴミ袋を、所定の場所に置いた。中には服が入っている。もう着なくなった服。襟がへろへろだったり、変色したり、破れたりした服が入っていた。ゴミ袋に、服をつめている間、服の思い出がよみがえった。この服は、あの旅行のときに着ていた服だ。このズボンは、あの飲み会のときに履いていた服だ。そんな服を僕は捨てた。
僕はコートの襟を立てる。新調したコートで、2万円だった。安いな、と思う。このコートも、捨てた服のように、思い出が宿るといい。