能力:ワールドオブワン

ずいぶん昔の話。僕はオーケストラが好きで、あれをどうにか一人でできないものかと考えていた。指揮者になるのではない。全部を一人でやりたいのだ。誰のせいでもなく、僕一人だけで作る世界だ。
シンセサイザーというものが家にあり、当時ピアノが弾けた僕は、さまざまな音が出せた(ちなみに今はピアノを弾くスキルが失われている)ソレを使えばできるだろう、と考えていたのだ。
「何本ものテープトラックをつかい、多重録音する技術がプロの世界には在る」と聞いたときに、うらやましいと思う反面「そんな高い機材を使わないと実現できないものなのか」とがっかりもした。
なんというか、いろんなものを作るときに、それが一人の力でできることなのか、それとも多くの人の力を借りないとできないものなのか、というものが大きくかかわってくる。
たとえば音楽についてだが、今は、パソコンが普及し、多くの人が一人で組曲を作り、奏でることができるだろう。贅沢な世の中だと思う。しかし、そんな今でもバンドを組んだりしている。まだ人間を使ったほうがコストパフォーマンスが良いということだ。
映画を撮りたい、と考えたとして、いろんな人間を雇い、作らなければならない。アニメを作りたいとしたら、どうだろう? 得意な人間がやればよい、という意見も確かにあるだろう。
しかし、一人の人間が、たった一個の脳が、生み出す世界を見たいのだ。そして僕はその世界を作りたい。ブログは少なくとも、それにかなり近い。料理も、盆栽も。自分の力だけ、なんてどこまでを指しているのか、自己満足でしかないのだろうが、趣味ってそういうものだと考えている。