欲しいのは時間

「物欲が少なくなっている」なんて話を聞く。デパートの売り上げは落ちているし、経済状態は良くならない。
しかし、眺めていれば、それは当然のことだとわかるだろう。1+1=2なんだよ! と騒いでいるのと、かわらない。でも騒ぐと、そうなんだ! 自分も騒がなきゃ! と多くの人が思うのかもしれない。
「欲しいものがない」人はいない。ただ、物体が満たされている状態にあるだけだ。無限の数の本を買いたいと思うかもしれないが、本を買ったら読む時間が必要で、その時間がとれない。これが現状だ。社会が豊かになり、ものがあふれる状態だから可能だ。
昔は100人で10個のものを取り合っていた。90人には行きわたらなかった。しかし今は違う。1万個のものがあり、100人がそこから選んでいる。9900個のものが余るのだ。
1人が100個持てばよい、というかもしれないが、それは本のたとえと同じだ。それを消費できず、置き場所や賞味消費期限がある。人間には24時間しか時間がなく、かばんは普通一度に1つぐらい持つだけだ。
だとしたら、厳選されたひとつを持つだろう。
物欲を満たしているのは、社会の豊かさだ。時間がない、なんて、豊かな社会じゃあないか。