妄想vs現実

妄想が現実を侵食する事がある。逆に現実が妄想を侵食することもある。
僕なんかは、たいてい現実のほうが強い。だから妄想に逃げ込むことが大半だ。では逆はあるのだろうか、と考えた。現実に逃げること。妄想から逃げたいこと。そんなことがありえるのだろうか。想像して思いついた。「ありえる」という状況だ。現実から逃げるために妄想に没頭するが、逆に妄想から逃げるために現実に没頭する人もいる。
それは過酷な妄想だ。
尊敬する人の死だったり。
失恋だったり。
何もない闇夜に目を閉じると、瞼の裏に浮かんでくるのだ。その人が。その人とのやりとりが。それは妄想だ。それはただの妄想だ。現実にはなんの問題もない。その日食べるものもあり、住むところがあり、衣服があり、何も問題はないのだ。それなのに。妄想にとり憑かれることがある。
だから、妄想に逃げるように、現実に逃げることがある。馬車馬のように働く、泥のように眠る。いつか忘れて、それもまた、思い出に変質する。良い悪いの話ではない。人間は忘れる能力がある。思い出にする能力がある。