僕は料理が得意ではない

10年近く自炊してきた僕が言う。僕は料理が得意ではない。一人暮らしをはじめてからずっと自炊だった。というのも、一人暮らしをし始めた当初、外食で食べつなげるほど生活費が稼げなかったからだ。そのため、会社に弁当を持参したり、カップ麺で食いつないだりした。やがて食費ぐらいは稼げるようになったが、自炊はそのまま続いていた。今でも基本的に晩御飯は自炊である。
そんな僕が言うが、僕は料理が得意ではない。
平日からグラタンを作ったり、角煮を作ったり、味卵作ったりもした。ジンジャーエールも作ったし、ケーキも自作した。だが、料理は得意ではない。それは「料理が得意」というものの定義の仕方である。
たとえば、冷蔵庫にAとBという食材が余っているとする。その食材AとBを用いて、焼、煮、茹の料理、さらには、和、洋、中の料理が二品以上思いつく人が料理の得意な人である。それが僕の定義である。
料理の得意な人間は、なぜそれができないのか、よくわからないらしい。「炒めて中華風の味付けにすれば中だし、洋風にすりゃ洋だろ」と料理のできる人が言う。そう。そこなのだ。その違いが圧倒的に違う。僕の料理は基本的に丸暗記で、応用がない。突然、今、この食材だけあります、なにか一品を作ってください、といわれて、作ることができる、それが料理の得意なやつの持っている特殊能力だと僕は考えている。男の料理(笑)みたいな料理を得意顔されると、失笑冷笑嘲笑しか起こらない。そんなものはレシピを見れば、食材から揃えれば、誰でも作れる。料理の得意不得意はそうじゃない。料理の得意とは、何も無く、自分の中から生み出せるモノだ。そんなの適当にぱぱっとやれよ、なんて僕にはできない。
逆に言えば。
自炊なんて得意じゃなくたって、やりゃできる。