ホラー作り話 −マヨネーズ蟲−

ホラーです。ご注意ください。
マヨネーズって食べたことある? まあ、多くの人がマヨネーズを食べたことがあるだろう。冷蔵庫に入っている家庭も多いが、卓上におきっぱなしで常温保存している家もわりと見かける。なかなか独特な味で、マヨラーなんていう独自の食文化も生み出すほど、ファンがいる調味料のひとつだ。
そのマヨネーズの中に『蟲』が混入している事件をご存知だろうか?
名前をマヨネーズ蟲と言う。
発見した少女も、これが蟲だとは気づかなかったらしい。
見た目には、ごく普通のマヨネーズにしか見えなかったからだ。なぜ、この少女がその蟲を発見することができたのか? 理由は彼女の食生活にある。彼女は、食パンにマヨネーズをかけてトーストするのが好きだったのだ。マヨラーの初期症状と言えるかもしれない。
その日も、彼女はパンにマヨネーズをかけてトーストした。彼女は焼けていくパンを眺めるのが日課だった。ところが、今日のパンの様子がおかしかった。彼女はあわててトースターからパンを取り出す。
そして絶叫した。
マヨネーズから這い出した、大量の蟲。小さなミミズ蛆虫のような足のない生き物が、焼かれた熱さに耐え切れず、うねうねと這い出してきたのだ。そのうち何匹かはパンの端から逃げ出し、ポトポトとトースターの中に垂れた。マヨネーズの焼ける良いにおいが立ちこめたそうだ。
混入していたのは、ミミズのような無脊椎動物で、何匹もの蟲がマヨネーズの中をウネウネと泳いでいた。色は乳白色で、成虫になっても1mm以下と、とても小さい。もともとは、鶏の卵に寄生している寄生虫なのだが、卵の段階では、発見がとても困難なことがわかっている。この寄生虫は、ヒヨコの脳で繁殖するため、卵の段階ではほとんど見つけられない。卵の生食でも、火を通した料理でも、発見されなかったが、マヨネーズという油との混合物が、この蟲にとって繁殖にちょうど良い環境だったようだ。
ヒヨコが大きくなり、脳が作られる頃から、この蟲は繁殖を始める。ヒヨコの脳内に寄生し、爆発的に増えていくのだ。受精卵でありながら孵化しない卵を調べたところ、脳を食い荒らされたヒヨコが見つかることがある。しかし、本当に怖いのは、このヒヨコがちゃんと孵化し、やがてニワトリへと成長するところにある。
そのニワトリを調べたところ、普通のニワトリでは食べないものを食べ物として摂取していることがわかった。この『マヨネーズ蟲』により味覚が変わり、蟲にとって都合のいいものを好んで食べるようになっていたのである。
マヨラーがなぜ生まれたのか…。
…まさか、だろ?

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注意:
…という作り話。そんな蟲はいません。そもそも、マヨネーズは卵と油により乳化するため、雑菌だったら死滅するし、生き物を入れても、オイル成分で呼吸ができずに死ぬ。マヨネーズは、酸化はするがほとんど腐らない(卵を使っているわりには、という意味。完全無欠な長期保存食なわけではない)。殺菌効果が高く、だからこそ開封しても常温保存できるのだ。キューピーの工場に行ったことがあるが、卵は完全管理されていたし、加工段階で異物が混入する可能性は、ほとんどない。また、卵の段階でウィルスでもないのに蟲が寄生することも不自然。脳に寄生する生き物は、たいてい頭部付近(眼や鼻や耳など)から入り、口から入ることも滅多にない(消化されちゃうから)。あと、人間の皮膚には「顔ダニ」と呼ばれる蟲がそもそも存在しバランスが保たれている。口の中の雑菌も同様で、増減はあってもバランスはほぼ一定(そうやって病気を防いでいる)。皮膚は酸性でコーティングされているので雑菌が繁殖しないようにできているのだ。
ちょっと勉強すれば「そりゃないわ」というのがすぐわかるが、まあ、ホラーとかSFって、そういうところを隠すのが手法だ。ホラーって、こういう、ぞっ、とする部分がホラーだと思う。人間だけが、悪意を娯楽にする。
あと、このホラーSSの本文は1000文字です。その後の言い訳が500文字あるけどな!(だって怖いじゃん)