テンピュールの枕

母親からメールがきた。
「健康にいい枕を通販で買ったんだけど、お父さんが合わないって言ってるの。よかったら、もらってくれない?」
父の日もあるし、僕は実家に戻ることにした。すると妹も来ていた。枕は妹のところに行くことになったらしい。話を聞いてみると、どうやらテンピュールの2万円ぐらいする枕らしい。妹は現在IKEAで買った(1000円ぐらいの)使いづらい枕を使っていたそうなので、新しい枕になって喜んでいた。
妹は、新しい枕を手に取りながら言った。
「こんな(値段の)高い枕、誰が使うの?」
母親は得意顔で答えた。
「そりゃ、あたしたちみたいな金があって、健康にうるさくなった年齢が使うのよ。でもお兄ちゃんって、こういうの持ってそうよね」
両親と妹が僕の顔を見る。
僕はコーヒーを飲みながら答えた。
「うん、5年以上前に買った。1万ぐらいだったよ。型が違うけど」
「やっぱりー」「うわー。お兄ちゃんキモイ」「そういうのに金かけそうだよね」
散々な言われようである。
「君らだって仕事して金もらってるだろ? なに小銭溜め込んでるんだ? どんどん使えばいい。どうせあの世までは持っていけない」