どこかの天才が、命を懸けて、願ったこと

国民全員、文字が読める世界が作りたい。
ある革命家が望んだことだった。
文字の読める国の民は言った。そんな小さなこと、と。
三ヶ月で100万人を、なんの意味もなく虐殺する世界がある。国民のほとんどが文字も読めず、無知で、自由のない世界。漫画やアニメじゃあない。古代の話でもなく、ほんの十数年前で、そして今でも、存在しているキリングフィールド。
安楽地にいる国民たちの新聞は、不安をあおる言葉がつづられる。
地獄だ、この世のものとは思えない、まさか、人にそんなことができるわけがない、なんということだ、身の毛もよだつ、恐ろしいことだ、恐怖の、直視できない、目を覆うような、まあ思いつく限りの、そういった煽り文句だ。
日本に生まれてよかった、と日本人に、そんな地獄の話を聞いてみた。しかし、本質を突くものは誰もいない。簡単に言うと『危機』を見たことがないのだ。これだけ漫画もアニメもあるというのに。
中韓の奴隷? アメリカの属国? 借金が400兆円? 年間の自殺者が4万人を超えた? 総理大臣が無能? 日本が終わった?
ノー! ありえません! 他国に比べればこの程度、ピンチの内にも入りませんぞ。