桜の立ち姿

k4k2008-03-23

僕の家には桜の盆栽がある。
東京の桜が開花したようだ。ソメイヨシノの品種で、一週間ほどで満開になるだろう。僕の家の桜はアサヒヤマという品種の八重桜で、ヨメイヨシノよりも少し遅く開花する。今は、花を咲かせる寸前の、爆発するようなやる気を感じる。花が散ると葉が伸びてくる。まさに三日見なければ活目せよだ。恐ろしいスピードで育つ。
やがて夏になると、枝葉の成長は止まるが、生い茂った葉の力強さを見る。強い日差しの木漏れ日の美しさに目を細める。苔生した根と大地のなだらかさが映える。この時期は水を大量にやる必要がある。一日二度。水不足になると、葉の先が枯れる。
やがて秋になる。葉は色づき、ぽとりと落ちる。枝だけになると、いままで大きく見えていた樹が、とても小さく見える。毛皮を刈り取られた羊や、水に落ちた犬を見る気分だ。こんなにも葉でボリュームが出ていただけなのだ。
冬になると樹は冬眠期に入る。堅く閉じこもるように一切の動きを見せない。枝ぶりの美しさが一番生えるのは冬だ。葉の若々しさはそこにはなく、本当の力強さが枝に宿る。樹の美しさは枝の美しさだ。
桜は一年の間、数週間しか注目されないようだ。花の咲く短い時間。2週間ほどだろうか。3週間ほどだろうか。他の45週間は、気にしない人がほとんどだ。実に惜しい。…いや、それでよいのか。美しさとは、誰にでも見えるわけではない。見ようと思う人間だけが見る。