キレイはキタナイ

最悪で最高の気分だ。
何の希望もない物語が、ときどき無性に読みたくなる。年に数回あるかないかわからないが、思い出したように異様にこってりとした油っぽい料理が食べたくなるようなものだ。以前に、毒本と言われている眼球譚を読んで「あれ? こんな程度なの?」と想像以上の薄味で、ちょっとの間遠のいていたせいか、すっかり忘れていた、あの絶望味。
庭先にはライトアップされたサンタクロースが、扉にはリースが、ツリーには靴下と星が飾られたクリスマスを祝っている暖かな家、恋人たちは微笑み、子供たちが翌日を今か今かと待っているプレゼントの中身に、釘がびっしりと打ち付けられた愛する家の番犬の首が、切断されて入っている。あはは、お楽しみはこれからだよ。そんな異様にこってりとした油っぽい料理が食べたくなる。
だけど、こいつは食べ過ぎると精神を壊す。誰一人にも、奨められない薦められない勧められない、その料理。誰一人も協調してほしくなく、誰一人も賛同して欲しくない、なんの希望もない吐き気を催す邪悪なエンターテイメントは、心底悪趣味だが、ときどき食べたくなる。
だけど、それって単純に泣きたい恋愛小説が読みたいのと、なんにもかわらずただ単純に快楽に浸っているだけじゃあないか。なんというか、…いかんね。うん、これは快楽に流されすぎだ。泣けるとか、絶望するとか、少なくとも人間らしい快楽ではあるが、もっと美しいものがあるだろ。
ああ、それにしても、絶望ってのは、なんてうまいんだ。むしゃむしゃ。

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今日の買い物
ユウタイノヴァ
ブラッドハーレーの馬車
隣の家の少女 ジャック・ケッチャム
欝になること間違いなしの三作。食べすぎじゃないのか?