好き嫌いがない、ってのは、好きなものもないことだ。

ものすっごい大好きなものがあった場合、それがダメになっていく姿に胸を透く気持ちが、わりと好きだったりする。
ジャンルによって違って、漫画家だと「残念だ。とてもとても残念だ」と思ってしまうのだけれど、ミュージシャンだと「この前の曲は最高だったのに、今回の曲はぜんぜんダメだ」と感じる。
ハナミズキ(誰が歌ってるのか知らないけど、たぶん読めない字の人)がわりと好きなんだけど、それがポップアレンジになってラジオから流れてきた。いやぁ、100年軽くなったなぁー、という失望感が僕を覆った。うん、このことがあんまり好きじゃなくなれた。
ほかにもこういう感覚があって、大好きで毎週通っていたラーメン屋があったのだけれど、ものすっごい体調不調の日に大盛りを頼んで吐いたらもう行かなくなったとか、うなぎが大好きだったけれど、3枚乗せたどんぶりを食べたら油っぽくて気持ち悪くなってから、うなぎをそんなに好きじゃなくなったとかもある。
こうやって僕を捕らえていたもの、僕が囚われていたものはなくなり、僕は自由になっていく。好きなものは、どうでもよくなっていく。嫌いなものがなくなっていくように、好きなものもなくしている。ときどき惜しい気もする。