グローバル視点 -謎のシチューを追え-

海外へ行ったことがありません。パスポートも持っていない。英語も話せないし、他の言語もできない。話せるのは日本語だけだ。非常に偏っているというか、今のところ、海外へ行ってみたいとは思うけれど、休みを取らなきゃとか手続きとか金銭面とかを考えると、東京にいて、のんびりしたほうが楽しいな、と思ってしまう。まあ、そういう性質なので、仕方がないと思っていただきたい(誰に?)
ところが、どきどき外人と話す必要があったりする。話すって言っても友達が外人とか言うわけではなくてビジネス上でです。相手は日本に来ているので、日本語ができる。すばらしい。国際的な人だ(相手が)。まあ、そんな人と雑談していると、わりと面白い発見があったりする。
たとえば、あるとき、中国人スタッフと食事に行ったときの話
「カレーって食える?」
「カレーは好きです」
「ふむ。カレーは平気か。じゃあシチューは?」
「シチューってなんですか?」
シチューしらねーのかよ、グレート!と思ってから気づいた。シチューってなんだ?日本や中国にあるシチューに近い料理ってなんだ?鍋?鍋じゃないような気がする。スープ?スープなのか、シチューって。
「どこで食べることができますか?」
「シチュー?シチューは…どこで食べんだ?」
食べさせてみようと思ったが、そもそもクリームシチューって外食で食べたことがない。レストラン?レストランでクリームシチュー出てくるところってあるの?ビーフシチューは、なんとかあるかもしれないけど。家でしか食わないなぁ。え?シチューって家庭料理なのか?
「それは洋食ですか?洋食屋さん、さっきありました。」
「うん、洋食なんだけど、うーん?普通は、家で作るもんなのよ。シチュー。」
「? 味噌汁の一種?」
「味噌汁は、近いような、遠いような…」
うわー、シチューってなんだよ。わかんねーよ。何者だシチュー。煮込みの一種?カレーの一種?味噌汁の一種?洋食?和食?おのれシチューめ。
ときどき、このように「なんて説明すりゃいいんだ?」という系統のものがある。日本人だから当たり前に思っている物事が、相手には通じない。自分がいかに常識という粘着質なものでくるまれているのかがわかる。他にもアメリカ人だと通じそうだけど、中国人だと通じないというものがけっこうある。日本は英語文化がわりと浸透しているので、カタカナ英語が溢れている。もちろんその逆もある。そういう「ああ、それって独自仕様なんだなぁ」という認識こそが、グローバル視点なのだと思う。