今日の黄金体験

電車に乗っているといろんな人間と出会う。
ある電車が発車する間際、駆け込もうと女性が走ってきた。女性はちゃらちゃらとした装飾品を身につけており、ハイヒールなのでそんなにスピードは出ないが、急いでいるのだろう、という動きだけはしている(無駄に)。結局、扉が閉まるのには間に合わず、彼女の目の前で扉は閉まってしまった。女性は電車の先頭方向にいる、扉を閉める人をにらみつけていた。
実に恨みがましい顔をしていたので、電車の中にいた僕はじっくり彼女の顔を見てしまったんだけれど、口は半開きでゆがみ、顔はうつむき、目だけで相手を見上げるように睨み付けている。いやぁ、なかなか、恥ずかしい顔だなぁ、携帯電話を持っているんだから、写真でも撮ればよかったか。今、考えると残念だが、そのときは「面白い顔だなぁ」ぐらいしか思わなかった。まあ、決定的瞬間というものは、そんなものだろう。服装がもうちょっとまともだったり、動きがもうすこし機敏だったり、あと数十秒はやくホームについていたら、もしかしたら飛び込み乗車ができたかもしれないねぇ。中央線だから5分もすれば次の電車はくるのだけれど、まあそんなことに気づくような人間なら運転手をにらんでなんとかなるなんて思わないだろう。それからその表情、本当にする人がいるんだなぁ。日本人なのに、Shit!と叫ぶ人みたいで面白かった。きっとテレビの見すぎだろう。
まったく、逆恨みだし、本当にその人を逆恨みをしていたのか、運転手をにらんでいたのかは不明だが、逆恨みだとして、話を進めることにした。そっちのほうが面白いから。本当は次の電車の発射時間を見ていたのかもしれないし。