一部と全部

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一部
父親がマカオにギャンブルに行きたいけど金が無いという。
僕「この前、アメリカ企業に株式投資して200万ぐらい儲けたって言ってたのは?」
父「あんなはした金使っちまったよ」

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上記は実際にあった僕と父親の会話である。
僕の父を知る人が聞いたら「あの人がそんな馬鹿な」というだろう。
そして下記が全部である。

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全部
父親の友人がガンになった。ガン治療は受けて命に別状はないのだが、本人は闘病生活で疲れてしまい、最近気力がめっきり減ってきているという。その友人の唯一の趣味がギャンブル。父は友人を外に連れ出し、ちょっとでも生きる気力が湧いてくればいいと、その他の友人たち数人をつれて、海外のギャンブル場に行く企画を立てた。
その他の友人の中に、アメリカで企業を起こし成功した男がいた。彼は起業する際、父親に投資を申し込んだ。何の実績もない彼に金を出す企業は少なかった。父は男に「くれてやるから使え」と100万円を渡した。男は起業し成功し、200万円にして父親に返した。
父親は別に金を返さなくてもいいのに、と思ったが、向こうもカリを返したいという気持ちを汲んでそれを受け取った。父親はその金をそのまま全額ユニセフに送った。別に降って湧いた金だし、もともとくれてやったものなので未練はないと言った。
起業で成功した男は「お前、この前渡した金あるんだから、余裕だろ」と言うので、父親もマカオに行くことになっている。

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真実は切りだされた部分のみに出るのではない。
短文で切れ味を鋭くすると、本質を見落とすことがある。