「うわーどうしたらいいんだ!?」ってなる作り話

暗い夜。見張り台に立つ兵士の男は、先日助けられた友人との会話を思い出していた。友人の幼い娘が、敵対する軍の捕虜になっているという。彼女を助けるため自分はこの地獄のような戦場を生きていける。娘の写真を見せながら、友人は照れくさそうにそう言った。
刹那に違和感があり、男は周囲に目配せをする。
風が木の葉を揺らす音が聞こえる。
しかし違和感は消えない。
暗闇から足音とすすり泣くような声。声はやがて号泣へとかわる。男の心拍数は跳ね上がり、暗闇の中を凝視する。全裸の少女が泣きながらこちらに向かって駆け寄ってくるのが見えた。彼女たちの背中には時限爆弾。男は思わずライフルを構える。「助げでええ」「お母さああん」「わああん」少女たちはわらわらと10人以上いる。「止まれ!」男が叫ぶ。全員が血まみれで、だれひとり傷のない子どもはいなかった。
後方に1人、足を引きずるようにしていた少女が、その場で転んだ。少女は蹴られた豚のような悲鳴を上げ、同時に起爆した。耳をつんざく轟音が周囲に響く。少女たちは振り返り、ふたたび悲鳴を上げこちらに走り始める。
「止まるんだ! 撃つぞ!」男が威嚇射撃をしたが、少女達の足が止まることはなかった。
男はその中に見つけた。
友人の娘。
写真の中の笑顔とはかけ離れていたが、一目で気づいた。
視野が急激に狭くなっていくのを感じる。頭の中は真っ白で埋め尽くされ、うまく考える事ができない。時間は止まることもなく進む。少女たちは、まっすぐにこちらに向かってくる。喉はからからに乾いている。指先は小さく震えている。
男は引き金を引