死ぬのにかかる値段

祖母が亡くなった。大往生、老衰である。最後まで頭はボケていなかった。彼女は骨折で歩けなくなり、衰弱し、やがて寝たきりになり、最後は起きているかいないか外部からは観測できなくなっていった。多くの人が望む「死の形状」の一つだと僕は思う。
葬儀が行われた。小さな葬儀場で身内だけである。それでも300万円近くかかったそうだ。明確な明細は見せてもらっていないが。もともと宗教関連のことに金払いのいい家庭である、というバックボーンが効いているのかもしれない。
ぼったくられてるよ!という人がいるかもしれないが、別にかまわない。Appleのパソコンを値切るヤツがいるか?同じレベルだ。
人が死ぬって金かかんだなぁ、とぼんやりと思った。生きるほうがかかるか。彼女は、健康保険のほかに、老人障害者保険など入っており、医療は90%が税金でまかなわれていたはずだ。毎月10万円払っていたら、90万が税金で補助されていたことになる。
ここまで金の話に絞って書いてみたが、僕は金の話をあまりマジメに聞いていない。正直、あんまり興味がなかったからだ。なんとなく言われた金額を覚えていただけだ。本当はもっとかかっているかもしれないし、かかっていないかもしれない。
僕には年金や健康保険が高いとか、自分に返ってこないから無駄だとか、言う気持ちがあまりない。税金を払うことにあんまりためらいがないのは、そういうバックボーンがあったからかもしれない。