老後のデザイン

実家には今、両親しか住んでいない。二人の老人が住んでいる家は広々としている。
家を建てたとき、どの程度を予想していたのか知らないが、僕の部屋はなく、兄弟一緒の部屋で過ごした。そんなに広いと思ったこともなかったが、今にして思うと、それなりに良い環境だったとわかる。まあ当時は、自分しか知らないので、何がよくて何が悪いかと言えば、自分が持っているものが悪くて、持っていないものが良い、と考えていた。カップ麺やコンビニ弁当に憧れ、金があったらあれを食べるのに、と思っていたものだ。
話が逸れたので戻す。
そうやって、家族で暮らしていた。やがて、僕が一人暮らしを始めた。実家からそんなに離れていないところにアパートを借りた。電車で10分だか20分程度の距離で、多くの人は「なんじゃそりゃ」と言うが、通勤が便利なのでそこにした。
やがて弟も妹も独り立ちしていく。祖母は身体を壊し、介護施設へと出て行った。家族で暮らしていた家は、今、老人が二人で住んでいる。
家のデザインとはどういうものなのだろうか?
たとえば、普段から最大を考慮して、ワゴン車を乗り回すという形状は、正しいだろうか? そんなものは好きか嫌いかで決めればいいのだし、選べることは裕福なことだから良いのだけれど。
過去、それだけの広さが必要だった。現在、不要になっている。別に困るわけでもないし、いいじゃないか、とも思う。ただなんだか、がらんとしていて、不思議な気持ちになる。
そうやって、大きな場所で二人の人間が一緒に暮らす形状と、小さな場所で二人の人間が別々に暮らす形状。後者のほうが金もかかる。でも核家族化とはそういう形状だ。