アートのパワー

紛争地帯で、兵士たちが焚き火を囲んでいる。その日は静かな夜だった。明日、死ぬともわからない戦いだ。誰もが平和を望んでいるのに、なぜ自分たちの手には武器が握られているのか。戦争など誰がはじめ、どうやって終わるのか。
そんなことを忘れるように、忘れたいように、兵士たちはその日、テレビを見ていた。
流れていたのは、日本のアニメだった。
少女のパンツが空を飛ぶ。
多くの人が「アホか。くだらねー」と言うようなアニメ。兵士たちはソレを見て、失笑した。少女の履いているパンツが夜空を飛んでいるシュールな映像。そんな空の下に、自分たちだっているのだ。
戦士のひとりがつぶやいた。
「日本人は、こんなに人生を謳歌しているのに、我々は武器を握って戦わねばならないのだろう。自分たちももっと人生を謳歌できるんじゃあないのか?」
人の心を動かすものがアートだ。芸術とは、無駄で、無意味で、非生産的だ。そこがいいんじゃあないか。