意図的に悪を行う

行儀も良くないし、礼儀もなってない行為、つまり「悪」を、わざとやることがある。笑いのために体を張った行為で、正直、気分が良くない。しかし、やったほうがその場の雰囲気がよくなるだろう、という総合的な判断で行う。営業の一部とも考えられる。
たとえば、ダウンタウンの浜田は、罰ゲームでカラシがたっぷり入ったシュークリームを食べたとき、そのシュークリームを床にたたきつけて怒鳴り散らす、という芸を見せる。キレ芸のひとつだが、あれをやると、かなり自分にストレスがかかる。食べ物をたたきつけるとか、見た目が汚いとか、心が痛むのだ。でも笑いを起こす場合、やったほうが笑いになる確立が高い。素人の僕が彼の行動を真似するのはなかなかハードルが高いが、学ぶところも多い。まずいものを食べたら、そういうオーバーゼスチャを見せ笑いに変える、という芸はわりと鉄板で受けがよいのだ。
先日、他人様からいただいた食べ物を「まずい」と突っ返してみた。まあ本人も「まずい」と自覚していたので、多少の笑い事で済んだが、正直、ものすごく礼儀がなってない、と自覚している。その人には「おいしいお菓子をプレゼントする」というフォローを入れた。僕は悪のストレスに耐え切れず、フォローにまわってしまったのだ。
売れっ子お笑い芸人さんだからそれができるのかもしれないけど、たぶん本人にもかなりストレスがかかるはずなのに、それができちゃうんだろうなぁ。その飛び越えられるなにか、ってのは、善意だったり、常識なんだろう、と想像する。善意や常識がないわけではなく、それを飛び越える何かが、新しい面白さを生むのだろう。
意図的に悪を行動することは、ほとんどの人間ができない。もし悪を行う人間がいた場合、そのほとんどは善意が欠けているか、悪に無自覚なだけだ。ようするに頭が悪い人間がほとんどである。意図して善を超え、悪を行える人間はどれだけいるだろう。もらい物にケチをつけるというちっぽけな悪でさえ、だいぶストレスがかかるもんだ。善のほうが、よっぽど楽に行動できる。そりゃ他人を殺すのに正義を持ち出すはずだよ。