心を打つ言葉、では足らない

涙し、感動し、感激し、すばらしいと感嘆するような、心を打つ言葉がある。世の中で言われる名言。いろんな本で取り上げられる言葉の羅列。だが、心を打つだけでは弱い、と僕は考えている。
本当の言葉はそんなレベルではない。真実にパワーのある言葉はそんなレベルではない。そんな言葉が届いたことがないのだろうか。いや、届いているのに、気づきもしないのか。お前はもう死んでいる、というのに近い。自分では気づきもしない。
『言葉によって行動を変えたもの』
その言葉こそが、届いた言葉だ。心を打つ言葉? そんな程度に何ができる。親が大切だとか、人類はみな友達だとか、自分を愛せとか、思いを馳せる程度の言葉に何ができる。
多少の届く言葉だったら、数日間のあいだだけでも、自分の部屋を掃除するとか、親孝行を一度するとか、障害者に席を譲るとか、行動に移るはずだ。
しかしそれでも結局、数日有効な、そんな程度の言葉だ。もっとだ。もっと食い込み、蝕み、痛み、出血し続けるもの。それに悪意があれば、あっという間に人を飲み込むが、それに善意があれば、より良くできる、そんな言葉。そう言う言葉を捜している。

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よつばと(8) よーいやさー