なんでできないの?

数年前にピアノを弾きたくなって、唐突にmidiキーボードを買ってきたことがある。数ヶ月だけ練習して、放置されてしまったけれど。音楽の練習をしたことがある人間なら、誰でも体感すると思うのだが、かならず同じところでつっかかる。「ここの流れは、小指から入らないと、最後まで届かない」と、さっきも、何度も、言い聞かせているのにうまくいかないことがある。もしその場に音楽の先生がいたら、きっと僕に言うだろう。
「どうしてできないの?」
「あなたの教え方、もしくは僕の覚え方が間違えている。もしくはこの流れは、混線しやすい回線である。その場合、僕の設計上の問題なので、簡単な解決方法はない。訓練によって矯正できるかもしれないが、その場合、練習が必要である。別のアプローチも含めて、より良い解決方法をあなたは考える時間があるか? あるのなら考えていただきたい」
…そんな子供、嫌だなぁ。でも他人に何かを教えるとき、他人から何かを教わるとき、それを自覚したほうが便利だと思う。少なくとも相手に理解できる周波数で話さなければ、意味はないだろう。テストや学期末評価として、教員が生徒に点数をつけているが、本質は逆だ。テストの点数が良いほど、教員の能力が高いという意味である。