一回目で、その物語を、最大限に楽しむことは、できない。という定義の謎

読み返せば読み返すほど、味わい深い物語がある。
そういった物語のファンは言う。一度見ただけではわからないところがあり、より深く読み込めば読み込むほど、その物語の奥深さを感じ、より楽しめるだろう。どうかもう一度読んで欲しい。そうやって人々を惹きつけ、虜にする。そんなステキな物語が世の中にはある。
しかし、なぜ一度ではそれが見えないのだろう。
思うに、それは「最大限」の定義が間違えているからだ。最大限をどこに設定したのか。人によって最大限が違うというのなら、一度だけ読み飛ばした人間にとっては、その物語の最大限は「一度読み飛ばす程度」であり、何度も読み直した人間にとっては、その物語の最大限は「何度も読み直すほど」だ。同じものを見ているのに、結果が違う。奥深さは作品そのものにあるのではなく、読んだ人間が読み込めるだけの深さに依存する。
好きな画家の絵も同様だ。誰もがその絵に感動するわけではない。漫画も、アニメも、小説も、劇も、映画も、この世にあるあらゆる娯楽が、そういう形状をしている。奥深さは、物体にあるのではなく、自己にある。