石川賢治写真展「天地水月光浴」

満月の光のみで撮影した写真を展示。
入場すると、ビルの中の光は全て失われ、自分が夜の世界に入り込んだように感じる。展示場は全体が黒で塗りつぶされ、青い光が弱くライティングされている。しかしそれは決して圧迫を感じるわけでもなく、恐怖を感じるわけではない。ただ静かに包み込む。虫の音、水の流れる音、木々が風に揺られる音が心地よく流れている。耳障りの良い静寂。広い展示場で、設置されたベンチはただの椅子だけではなく木の切り株だったり、ところどころには不思議に伸びた木が置かれていたり、写真展とあわせた夜のラインティングが展示場にマッチしていて雰囲気もよい。
写真は満月で撮影されたためか、ほとんどが青と白で形成されている。高感度カメラを使用したせいか、画素が粗く、まるで絵のようだ。写真からは、動きは感じない。写真からは、音を感じない。写真からは、暖かさを感じない。写真はすべて夜の世界、静止、無音、無機質、孤独、冷たさ、ただ、それはマイナスではない。それは忌むべきものでもない。そういった、静止に包まれて死にたいと思うような感覚。
有料展示だったわけだが、それなりに人が入っている。写真展というものにほとんどいったことはないが、こんなに人が入るものなのだろうか。少なくとも写真家なんて荒木…えーと、飛呂彦じゃあなくて…なんとかと、カノウテンメイぐらいしかしらねーぜ(ド素人なんてそんなもんですよ)