病気の子供

ある絵描きさんがいて、僕はその人のファンなんだけど、その人の子供が最近生まれたのね。それをすごくその人は喜んでいて。絵もすごく優しい絵を描くようになって、線も優しいし、色使いも優しいわけ。
で、その子がね、体が弱いらしくて入退院を繰り返してて、その絵描きさんは、絵でものすごく儲かってるわけでもないから、いろんな商売に手を出して、ちょっとでも入院費を稼ごうとしていたわけ。
線も荒れてきて、文章も荒れてきて、それが僕はすごく悲しい。もうさ。僕が払うよ。ちょっとだけど。お布施ってぐらいしか渡せないけどさ。僕はその人の絵を買ったこともないし、その人と直接知り合いでもないし、その人と話をしたこともない、全然知らない他人だけど、そういう気持ちになった。
で、ふと気づいた。
それを拡大していくと、日本のどこかに病気の子供がいて、そいつが金がなくて病院にいけない、治療が受けられない。なんてことがないように、みんながちょっとでもいいから、その子を助けよう、って気持ちが集まって、健康保険って仕組みを作った。自分は病院行きません。でもさ、健康保険料払ったら、どっかしらないけど、病院にいけないような収入しかない子供が、助かるかもしれないじゃん。
もっと拡大していくと、たとえば、川が氾濫してしまうとか、学校がないとか、犯罪が起こるから警察を雇うとか、地面がきれいに整備されているとか、そうやって政府ってシステムや、税金ってシステムを作った。
税金を払うってのは、そういう意識だ。自分のために税金が使われないって、それだけ良いことなんじゃあないの? 税金を多く払うってことは、それだけ多くの人を助けてるってことなんじゃあないの? なんか、そういう「使わないと損だ」って気持ちこそが、貧しさの根底だと僕は考えている。